理学療法士、作業療法士になって1年目~3年目はとにかく大変な時期です。学生時代とは違う生活環境に、聞いたこともない疾患を持つ患者へのリハビリ。
さて、そんな時に持っておくべきアイテムが「参考書」です。
症例や患者さんのことでわからないことがある時に役に立ちます。
自分の考えをまとめたり、自分の意見に説得力を持たす時にも有効活用できるでしょう。
とはいえ、参考書って数がめちゃくちゃ多いです。高いお金を出して買ったのに、本棚で眠っている…という経験ありませんか?
そこで今回は、「新人さんにオススメしたい」本当に役に立つ参考書をご紹介します。
この記事でわかること
- 新人の理学療法士、作業療法士に役に立つ参考書がわかる
- 学生~社会人になるまで、用意しておくべき本がわかる
参考まで、僕は理学療法士になって今年で7年目になります。
これまで学生のケースバイザーやスーパーバイザー、また1~2年目の後輩指導係としても仕事を行ってきました。
そんな教育指導に関わる中、勉強方法やオススメの参考書も紹介することがあります。
今回は、新人のPTOTや学生さんから
「わかりやすい」
「タメになる」
「便利な参考書でした」
と反応が良かった教科書をご紹介します。ぜひ参考にどうぞ!
理学療法士・作業療法士1~3年目が読むべき参考書8選!【新人向け】
新人時代に不足しがちなのは、以下の3点です。
- 解剖学、運動学、生理学の知識
- 疾患別の知識
- 疾患別の評価方法と治療戦略
この3点を網羅している本が望ましいです。
でも基礎知識から治療プログラムまで全て網羅をしている本は中々ありません。

すべてを網羅している本ほど、いざという時に知りたいことが載っていないこともありますよね
そこで今回は、「疾患別の知識」や「アプローチ方法」などある程度充実していて、僕が新人時代に買って本当に良かった、めちゃくちゃ役に立ったという本だけを中心にまとめてみました。
参考書選びに悩んでいる新人さんは参考にどうぞ~!
オススメ1.実践mookシリーズ

学生時代であれば、学校のカリキュラムに沿って授業が進みます。
しかし臨床に出れば、何を勉強するのも個人の自由。なにをやっても自己責任です。
とはいえ、いきなりポンっと病院で働いても、
「勉強が大切って言われても、なにから手をつけていいかわからない…」
「新人時代ってなにを勉強すればいいの?」
と迷うこともあるでしょう。そんな時に実践mookシリーズがオススメです。
このシリーズのコンセプトは1~3年目のセラピストに向けた本です。そのため新人や1年目がぶつかりやすい疑問や悩みをわかりやすく解説しています。
「新人さんへひとこと」という具合に、ワンポイントアドバイスも充実。学校では教えてくれないけど、新人PTOTが注意しておくべき点をまとめています。

さらに「Further Reading」というように、さらに知識を深めたい人に向けて参考になる本も紹介しています。

よく「参考文献」「参考図書」として巻末に紹介されていることがありますが、「新人さんに向けたオススメの本」と紹介しているのは、あまり見かけません。
「関節可動域制限」や「膝・足関節制限」「運動連鎖」といった学校の授業よりも発展した内容だけど、臨床では基礎的な内容が中心なので、新人さんこそ参考になる内容が多いです。
こんな方におすすめ
- 臨床に出たばかりで何から手をつけていいかわからない人
- とりあえず何か勉強したい!とやる気あふれている新人さん

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オススメ2.病気が見えるシリーズ

\ ↑カバーのない病気がみえる /
病院で働くのであれば、一度は目にするであろう「病気がみえる」シリーズ。とにかくイラストと知識が豊富なので、ぜひ1冊は持っておきたいところです。
「病気がみえる」というタイトル通り、視覚的に覚えることができます。
「勉強が苦手…」
「時間もないし、サクッと勉強したい…」
という人にこそ役に立つ1冊です。
そしてリハビリのオーダーが出やすい4つは持っておいて損はありません。
- 脳神経
- 呼吸器
- 循環器
- 運動器・整形外科
この4つは持っておいて損はありません。
疾患別の特徴や治療法がまとまっているだけではなく、「なぜこの臓器、神経が阻害されるとど、こんな症状がでるのか?」という解剖学や生理学のバックグランドも紹介されています。
そのため基礎知識が不足している学生さんにもピッタリです。
使い方としては辞書みたいに使うことをオススメします。
たとえば新患や新しい担当を任された時に、知らない疾患、あるいはどんな病気なのかわからない時は、一度「病気がみえる」で確認しておけば、ある程度の知識は大丈夫。
いきなり評価、治療を行う前にリスク管理なども把握することができます。
こんな方におすすめ
- 疾患別の知識が不足している人
- 知らない疾患を担当することになった人

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オススメ3.フィジカルアセスメントがみえる

続いてこちら、「病気がみえる」と同じ監修の「フィジカルアセスメントがみえる」です。
内容としては、
- 血圧や呼吸
- 浮腫の評価
- 脳神経のアセスメント
といったバイタルの基礎知識から、身体評価まで細かく網羅されています。
「看護師」「看護学生」向けですが、ICUや急性期で働くリハビリスタッフや訪問分野で働くセラピストにもめちゃくちゃオススメです。

バイタルサイン?そんなの血圧計が測ればいいでしょ…
というPTOTがいますが、はたして本当にそうでしょうか?たとえば急性期や手術後の患者に急変はつきもの。
リハビリ中に急に意識レベルが下がることはもちろん、場合によってはリハ中に急変して命を落としてしまう可能性すらあります。
そんな時に血圧計や計測機器を使わずとも、己の「目」と「手」と「耳」を使って素早く状態を評価する技術は大切です。
あなたのちょっとしたアセスメントが、患者さんの命を助けることもあります。
それにリハビリであれば40~60分と1度のリハで長い時間関わります。看護師以上に密に関わるため、トラブルに気付ける可能性も多いのです。

僕も病院で働いてた当時、ある患者のリハ中に平行棒内の真ん中で、意識レベルが下がってしまうことがありました。
歩行訓練中であったため、血圧測定する余裕もなかったほど。そんな時に「自分の手」を使って、血圧をおおまかに知る技術は役に立ちました。
現在は、訪問リハビリ分野で働いていますが、維持期でも役に立つ1冊です。
というのも、訪問分野では近くに相談できる人もいません。頼れるのは自分自身のみです。
看護師さんの簡単なアセスメントくらいはできる必要なので、訪問分野でも頼りになる1冊になります。
こんな方におすすめ
- 血圧計やパルスオキシメーター、ステートがないとバイタルサインが評価できない人
- ICU、HCU、急性期~周術期、訪問分野で働いている人

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オススメ4.ビジュアル実践リハシリーズ

羊土社が出版しているシリーズ、「ビジュアル実践リハ」になります。
本のタイトルにもあるようにビジュアル(イラスト、写真)が豊富で、非常にわかりやすくまとまっています。
シリーズは「呼吸・心臓」「整形外科」「脳・神経系」と別れており、どれも良書です。知っておくべき知識から、具体的なアプローチ法まで丁寧に解説されています。

個人的に役にたったのが、時系列別に分かれているという点です。
たとえば「脳梗塞」のリハであれば、急性期、回復期、維持期で考え方が変わるのはご存じの通り。
急性期であればリスク管理が大切になりますし、回復期であればADLの獲得。維持期であれば機能維持を中心とした戦略が必要になることも多いですよね。
各疾患が病期のステージごとにまとまっているので、患者さんは病気を発症してから、どんな状態なのか、今どんな考え方が適切なのかという考えを深めることができます。
ちなみにイラストが豊富という点では、上記で紹介した「病気がみえる」がピカイチです。
疾患の知識をほぼ全て網羅しているので、タメになる本ではありますが、リハビリのことについてはあまり触れられていません。
逆にビジュアル実践リハは、完全にセラピスト向けの本です。
「病気がみえる」ほどマイナーな疾患のことは掲載されていませんが、図解の量はかなり豊富です。
臨床でよくみかける病気、たとえば脳梗塞からパーキンソン、COPDや心不全といったメジャーな病気はほとんど網羅されていますよ。
手元にあると心強い1冊になります。
こんな方におすすめ
- 疾患の知識を整理したり、深めたい人
- 治療やアプローチ法で行き詰っている人

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オススメ5.運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学

変形性股関節症やTKAといった疾患の知識やアプローチ法をまとめている本は多いです。
しかし、
「なぜ膝を曲げると、大腿部の内側が痛むのか」
「なぜこの手術をすると、肩関節の内包が痛むのか」
というような疑問を持つことが、臨床ではよくあります。1~3年でしたらあるあるの悩みだと思います 笑
臨床でよくぶつかる疑問、不安を解決する教科書は数少ないですが、「運動器疾患のなぜがわかる臨床解剖学」は違います。
疾患別の特徴や知識はもちろんのこと、「○○の手術はこんな風に切開している。だからこんな症状が出やすい」、「××の疾患はトレンデレンブルク兆候がでやすい。なぜなら△△の筋や神経、骨が密接に関わっているから」という具合にわかりやすく、論理的に解説されています。
そしてイラストも適所に紹介されているので、頭にすいすい入ってきます。
PT向けの本として紹介されることが多いですが、新人OTさんにもオススメです。
臨床で見る機会が多い、肩関節不安定症や、腱板損傷といったメジャーな疾患もまとまっています。
「腱板損傷で、なぜ自らの力では、手をあげられないのか?」
「胸郭出口症候群で、なぜ鈍痛と冷感が生じるのか?」
「脊椎圧迫骨折で、なぜ易疲労性が強くなるのか?」
「変形性股関節症で、なぜ腰痛を合併したのか?」
こういった疑問に答えられない方には、オススメです!
こんな方におすすめ
- 運動器疾患を見ることが多い人
- 「なぜこんな症状が出るんだろう?」と悩んでいる人

類書として「運動機能障害のなぜ?がわかる評価戦略」もオススメです。
同じ著者である工藤 慎太朗先生が書いており、めちゃくちゃわかりやすいです…!


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オススメ6.臨床評価指標入門

理学療法や作業療法は「客観的な判断」と「解釈」が大切です。
「MMT3だから筋力が弱い」とか「TUGが7秒だから歩くのが早いしバランスもいい」と短絡的に考えるのはリスキー。
そんな時に役立つのが「臨床評価指標入門」です。
新人時代であれば、一度は悩むのが「評価結果の解釈」ではないでしょうか。

10m歩行が12秒だったけど、これって遅いのかな、早いのかな?

T-cane歩行を病棟内自立にしたいけど、どう判断すればいいんだろう?
こんな疑問を感じることがあります。そんな時に、一定の指標があると心強いです。
「臨床評価指標入門」では、臨床でよく行われる検査、評価の基準をまとめています。あなたの検査結果から、「結論としてどうすればいいか」という考えをサポートしてくれます。
個人的には学生さんにこそオススメできる本ですが、3年目を過ぎても本棚に1冊あると、安心感があるものです。
こんな方におすすめ
- 検査結果をリハに活かせていない人
- ADLの自立度やゴール設定に苦手意識がある人

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オススメ7.理学療法プログラムデザイン

京都大学の市橋先生が書いた本、「プログラムデザイン」になります。
内容としては上記で紹介した「運動器疾患のなぜ?がわかる臨床解剖学」に近いです。
たとえば
「片麻痺の患者で、座位で円背姿勢をとるのはなぜ?どうすればいい?」
「体幹屈曲時に腰痛が増強するのはなぜ?アプローチ方法は?」
という具合に、臨床で抱える疑問に対して、Q&A方式でまとまっています。
「運動疾患のなぜ?」と大きく違う点で、エビデンスベースではないということ。
著者の市橋先生も序文で書いているのですが、
「今はやりのエビデンスはない。もちろん、エビデンスの重要性を否定するつもりはない。(略)膝のロッキングを起こす場合どうするのか、足尖を引きずる場合どうするのか等、臨床現場で問題となる様々なケースに対してどのように考え、どのような理学療法を行えばよいのかをエビデンスを教えてくれない」
とおっしゃっています。
そのためエビデンスベースではないけれど、実際に患者さんを良くできた様々なアプローチ法をまとめています。
「座位で全身の筋緊張が高くて動けないケースで、こんなアプローチしたら良くなったよ」
「長期臥床後の歩行時に、痛みあるケースでは、こんな治療法したら改善したよ」
という具合に、アプローチ法は100近く。この1冊あるだけで、自分の引き出しの量が爆増します…!
そしてなにかと知識や技術が足りていない新人時代。やる気だけで取り柄という人もいるでしょう。
「とにかくこの患者さんはなんとか良くしたい…!」という考えが強い人には、最適な1冊だと思います。

僕が新人の時に買った本の中で、一番何度も読み返した本が、このプログラムデザインでした
こんな方におすすめ
- とにかくセラピストとしての引き出しを増やしたい人
- エビデンスはさておき、自分の担当患者さんをとにかく良くしたいと考えているセラピスト


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まとめ:良書と出会えるかどうかが1~3年目の別れ目
上記で7つの教科書を紹介してきました。
とはいえ、上記7冊を持っていれば安心できるか、といえばそんなことはありません。
PTであれば歩行評価は必須ですし、OTでも動作分析は知っておかなければいけません。
テキトーな5~6年目によくありがちなのが
「あの人の歩き方、なんか転びそうだよねw」
「あの人起き上がり下手だよねー。もっと左腕使えばいいのに」
と大雑把な評価しかできないこと。
転びそうな歩きには理由があります。左腕が使えないのには原因があります。そんな動作も評価できずに、5年目を迎えてしまっては、職場のお荷物状態になってしまいます。
他にも「画像の見方がわからない」「画像評価に苦手」といったセラピストは珍しくありません。
たとえば「右側頭葉や頭頂葉にかけての脳梗塞の患者さん」がいたら、どんな障害が出そうか予想がつくでしょうか。
脳画像を見て、「ここに出血があるから、麻痺はないけど高次脳はありそう…だから初回評価は、高次脳中心に評価しようかな」みたいに戦略が立てられるようになると、ひとまず初心者セラピストは卒業だと思います。
脳画像を評価できると、看護師やドクターとも話が進みやすいので、ぜひ知っておきましょう。
ちなみに高次脳はめちゃくちゃ奥が深いです…!
評価も難しいことながら、アプローチや戦略も中々立てづらいので、ぼんやりリハしているようではいつまで経っても良くすることができません。
しかし高次脳障害の教科書は、ST向けの本が多いです。ST向けの本でもいいですが、内容濃すぎてついていけないことも多々あります。
そんな中でもわかりやすいと思ったのが、「PT・OT・STのための脳損傷の回復期リハビリテーション」です。
イラストが豊富のため、高次脳障害のことがわからなくても大丈夫。非常に読みやすく、サクサク読むことができます。
「回復期リハビリテーション」とありますが、急性期や慢性期でも十分対応できる良書です!!
と、読むべき本「7選」とか言いながら、10冊以上も紹介してしまいました 汗
1~3年目は勉強することがたくさんあります。
ただしこの1~3年間で努力すれば、他のリハビリスタッフには負けないくらいのキャリアになります。
PTOTが増えている今、努力しないPTやOTはどんどん淘汰されていくのではないでしょうか。プライベートを楽しむことも大切ですが、給料のほんのすこしを教科書に使ってみましょう。
ちょっとしたお金の使い方があなた自身をレベルアップさせることができると思います。
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