この記事はこんな人に向けて書いています。

「急性期リハ」と聞くと、「怖い」「難しそう」と言う人は少なくありません。
たしかに急性期=ルートが多い、急変しそう、といったネガティブなイメージを連想しやすいですよね。
とはいえ、急性期リハビリの魅力は、たくさんあります。
今回は、総合病院の急性期で働いていた筆者の意見をご紹介します。
この記事でわかること
- 急性期リハビリのやりがい
- 急性期リハビリのつらいこと
- 急性期リハビリの楽しいこと
参考までに、僕は総合病院(急性期300床、回復期200床)で、約4年間働いてました。
主に脳血管疾患や整形外科の術後を担当することがありましたが、「呼吸療法認定士」を取ってからは、呼吸ケアチーム(RST)としては働くこともありました。
呼吸内科の先生や、麻酔科のドクターと近い距離で、一緒に働けたのは、本当に貴重な経験。
そんな急性期で働いていて、大変なこともたくさんありました。
でも、楽しいことはその倍以上あると思います。
「急性期に興味はあるけど、なんか怖い…」
と感じている人は、ぜひ参考にしてくださいね!
急性期リハビリの「怖さ」と「難しさ」
まず最初に「急性期リハビリで大変なこと、難しいこと」を紹介していきます!
僕の独断や偏見も交じってしまいますが、急性期リハビリって難しいな~と感じた点は、以下の4点。
- 術後の離床は怖い
- ルート類が多い
- 防げない能力の低下
- 情報共有の難しさ
それぞれ簡単に解説していきます。
難しさ1.術後の離床は怖い
脳外科や心臓外科の患者さんで、術後初めて離床をするのは、理学療法士やリハビリの仕事です。
中にはICU、HCU、CCUといったハイリスクの患者さんたちがいる部屋で、リハビリを進めます。
初めてICUに入ると、
「うっわ…モニターだらけで、よくわかんない数字が並んでいる…」
と思って、足がガクブルしたことも。

そんな中で術後1日目、状態が不安定な患者さんを離床(起き上がりや座位)していきます。
「離床したら血圧下がるのでは?」
「急変したらどうしよう…」
「術創部が開かないかな」
こんな不安も付きまとうので、やっぱり初回の離床は怖いし、緊張します。
ただし、ハイリスクで、離床自体が難しい患者さんだと、リハビリスタッフ2~3人で協力したり、看護師やドクターの先生と一緒に離床を進めていきます。

2.ルート類が多い
上記の初回離床とも関連しますが、術後の患者さんってルート類がめちゃ多いんですよ。
心臓外科だったら、胸部のドレーンから、Aライン、末梢ルート、バルーンまでさまざまなルートに繋がっています。
比較的、ルート類の少ない整形外科の患者さんでも、やっぱり術創部からドレーン(JVACなど)があることも多いです。

ルート類の管理や把握だけで、10分、20分かかることも。
時には、ルート管理を一人で対応しきれず、2~3人で注意しながらリハビリをすることもあります。

という人もいますが、自分一人で介入するのはリスキーです。
たとえばAラインや、ドレーンを抜いたら大惨事になりかねません。場合によっては、普通に患者さん亡くなります。
急性期に慣れていない方や、新人さんは、はじめは自分+急性期経験者のベテランの2人で行うことが多いのではないでしょうか。
時には3~4人のリハスタッフ+看護師+主治医合わせて、5人、6人でリハを進めることがあります。
リスクがあるとはいえ、
- 1つのチーム
としてリハビリを行い、無事終えることができた時は達成感も違いますよ!

3.防げない能力の低下
血液データもよくなく、状態の悪い患者さんのリハビリを行うことがあります。
みるみるうちにやせ細り、顔色も悪い。
特に高齢者に多くて、能力の低下を目の当たりにすることもあります。
最初は歩けていたのに、次第に歩行も困難。
起き上がりも介助が必要となり、さらにはベッド上寝たきり。
このように身体機能の低下を目の前にすると
- リハビリでできることって何だろう?
としみじみと感じることがあります。
4.情報共有の難しさ
急性期はとにかく連携が重要です!!
たぶん病院職全般に言えますが、情報共有はめっちゃ大切です。
急性期では、
- ドクターへ安静度の確認
- 看護師さんに、患者さんの病棟生活の状況確認
と、他の職種との情報共有が必須になります。
*安静度 リハビリを行う範囲のこと。「ベッド上」「病棟内」「病院内」など指示をもらって、リハをします。
しかし先生によっては、なぜか情報共有を面倒くさがる先生もいます…。
「ごめん!また後にしてくれない?」
と言われたり、遠まわしに逃げられることもしばしば。
看護師さんに状態確認をすると
「私、担当じゃないからわかんなーい」
と一蹴されて、共有を拒まれることもあります 泣
急性期リハビリの「楽しさ」と「魅力」
ここまで急性期の難しさを紹介してきました。
でも急性期は学べることも多いし、楽しいこともたくさんあります。
なにより「やりがい」が詰まっています…!
僕が「急性期で働いていて良かったな~」と思ったことは、下記の6点。
- 患者さんの変化のスピードが速い
- 検査所見をフルに活用する楽しさ
- 他の部署と仲良くなりやすい
- リハのフィードバックが早い
- 患者さんの回転率が速い
- 自分の限界を知れる
それぞれ詳しく解説していきます!
楽しさ1.患者さんの変化のスピードが速い
とにかく患者さんの変化が速いです!その速さは、5G以上。
たとえば大腿骨頚部骨折の手術をして
「痛い!歩けない!」
「リハビリなんてしたくない!」
と嫌々言っていた患者さんが、1週間後にはスタスタ歩いていて、2週間後には笑顔で退院する、ということはザラにあります。
目の前の患者さんが、みるみるうちに良くになっていくので、とても楽しいです。

楽しさ2.検査所見をフルに活用する楽しさ
リハビリの評価としては、MMTやROM、歩行の評価やバランス評価、高次脳評価などがあります。
しかし急性期では、リハの評価だけではなく、
- 栄養データ
- 血液ガス
- CTやMRIの画像データ
などの検査所見をフルに使います。
普段生活している病棟での様子を看護師さんから聞くことも、大切な評価ポイント。
- リハビリの評価
だけでは限界を感じることも結構多いです。
そのため、いろいろ所見を使いながら、職種と連携する必要があります。
時には
「この患者さんアルブミン低いし、リハビリもっと軽めにやったほうがいいかも」
と看護師さんから一声かけられることも。


楽しさ3.他の部署と仲良くなりやすい
看護師さんから薬剤師、栄養士から主治医のドクターと、いろいろな職種と連携するのが、急性期です。
そのため他の部署からも、顔や名前を憶えてもらいやすく、仲良くなりやすいです。
僕が新人の時は、
- まず看護師さんの顔と名前を覚えるのが、一年目の目標ね
と先輩から言われました 笑
僕の友達では、看護師さんと付き合っているOTの友人もいえば、研修医と結婚したSTもいます。
それくらい多職種と密な関係になりやすいのが、急性期です。

と思われるかもしれませんが、やはり多職種と仲良くなったほうが、情報共有もしやすいです。
患者さんの生活状況を教えてもらいやすいし、些細な変化があった時にも、一声かけてもらいやすい。

楽しさ4.リハのフィードバックが早い
患者さんの変化のスピードが速いことは、上記の通り。
「変化しやすい」ということは、リハビリにも当てはまります。
たとえば歩行中にすり足があって、転倒リスクのある患者さん。
この方にアプローチした時に、リハビリの介入前後で、歩容が大きく変わっていることはよくあります。
他にもリハを行う前後で、座位や起き上がりの介助量が変わるというのは、リハビリあるあるです。
反対に言えば、「変化がなかった」「特に変わらなかった」という時には
- 他に問題点があるのでは?
- 負荷量が足りていないのでは?
- 別のアプローチの仕方が良いのでは?
とあれこれ試行錯誤します。
この思考が、急性期リハビリの楽しさでもあると思います。
楽しさ5.患者さんの回転率が速い
回復期や維持期でのリハビリと比べて、圧倒的に患者さんの回転率が早いです。
入院してきて
「うわ…血液データ悪いし、時間かかりそう…」
と思っていたら、2週間ほどで退院してしまうこともしばしば。
中には3~4日の短い入院期間でリハビリをすることもあります。
患者さんの回転率が早い分、短期間でいろいろな患者さんを担当します。
聞いたこともない疾患の患者さんとも出会うため、知識量も増えました。
なにより短期間でいろいろな患者さんと話すので、嫌でもコミュにケーション能力は上がります

あと、いろいろな患者さんと出会う分、貴重な話を頂けることも多いです。
- 元官僚で、リハビリの制度、法律にも関わった患者さん
- 学校の校長先生をやっていて、生徒指導に全力をかけた患者さん
- 外資系の仕事で、世界中を飛び回り、5カ国語話せる患者さん
など普段関わることができない方から、自分が経験もできないような話を聞けた時は
- リハビリやっていて良かったな~
と素直に思います。

楽しさ6.自分の限界を知れる
ハイリスクの患者さんや、介助量が重たい患者さん。
状態が悪くて、なかなか思うようにリハビリが進められない患者さんもいます。
そんな時に「理学療法」「作業療法」「リハビリ」の限界を感じることがあります。
だからこそ、先輩や後輩、同期のスタッフと相談したり、時には看護師さんと話しあうこともあります。
ドクター交えて、カンファレンスで話し合うことも多く、
- チーム医療の大切さ、重要さ
を学ぶことができます。
リハビリは1対1で行うため、プレッシャーや責任感も1人で抱えがち。
でもリハビリには限界があり、チームで協力しながら、治療を進めることが大切です。

急性期のやりがいは「責任感」と「連携」
急性期リハビリの大変さ、楽しさをまとめました。

と気かれたら、「責任感」と「連携」だと思います。
責任感は、言葉通りでセラピストとしての責任ですね。
状態が不安定な患者さんは、リハビリ次第で良くも悪くもなります。
時には慎重にゆっくり進めて、時には大きく行動して、リハビリのアプローチ次第で、患者さんへ大きな影響を与えることがあります。

と思うかもしれません。
だからこそ、「連携」が大切で、わからない時は先輩や同期スタッフと相談します。
看護師さんにもリハビリの状況を伝えて
「こんなリハビリやってみたら?」
と助言をもらうこともあります。
時には、主治医の先生が見守りのもと、リハビリを行うこともあります。
「連携」はとても大変。
だけど「チーム医療」にはなくてはならないものだし、一度急性期で学んでしまえば、回復期や維持期、どの分野に行っても、役に立ちます。
慢性期分野(たとえば訪問リハビリ)でも、ケアマネとの連携が必要になりますし、「自分1人」では、やはり限界があります。
急性期分野はたしかに大変ですが、学びが多い分野ではあることは、間違いありません。
まとめ:急性期分野は面白さの宝庫
個人的には、理学療法士、作業療法士であれば、一度は急性期を経験しても良いと思います。
それくらい面白い分野ですし、自分自信を成長させてくれる医療分野です。
1年目だろうと、10年目だろうと、学べることが多い。それが急性期です。

と悩んでいるなら、急性期という選択肢も考えてみてはどうでしょうか。
ただし病院選びは注意してくださいね。
職場によっては、風通しの悪い職場もあり、多職種はおろか同じリハビリ科内で、バチバチしている病院もあります…。
スタッフ同士の仲が悪いと、質の高いチーム医療も提供できません。
何より人間関係で苦労してしまうので、職場選びには注意が必要です。
興味がある方は、ぜひ積極的に急性期分野にチャレンジしてみましょう(^^)!
病院選びを失敗したくないなら
「次に働く場所は、人間関係が良くて、楽しくリハビリできるところがいいな」
「サービス残業はなくて、プライベートをもっと充実させたい!」
と考えるなら、大手の転職サポートサービスをオススメします。
なぜならハローワークや求人誌、有名ではない転職サイトだと、圧倒的に求人情報の量で劣るからです。
くわえて職場の裏側の情報にも詳しいサポーターもいるので、ブラック病院を回避できる可能性が高いです。
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